VPD(蒸気圧不足)とは?計算方法と重要ポイント
- 1. 蒸散(トランスピレーション)とは?
- 2. Vpdとは?
- 3. Vpdが大麻植物に与える影響
- 3. a. 気孔の開閉
- 3. b. Co2吸収
- 3. c. 蒸散
- 3. d. 根の栄養吸収
- 3. e. 植物のストレス
- 4. Vpdの計算方法とvpdチャート
- 5. 成長ステージ別・理想的なvpd
- 5. a. クローンに適したvpd
- 5. b. 栄養成長期に最適なvpd
- 5. c. 開花期の理想vpd
- 6. Vpdを変えるには
- 6. a. 温度
- 6. b. 湿度
- 6. c. 照明強度
- 7. 蒸気圧不足(vpd)に関するよくある質問
- 8. まとめ
大麻の種を屋内で育てる場合、湿度や温度などあらゆる生育環境を自分で管理することになります。これらの要素は植物の基本的なプロセスに影響を与える可能性があり、そこでVPDが重要になります。蒸気圧不足(VPD)は、温度と湿度を最適な数値に調整するためのテクニックで、植物のパフォーマンスを向上させ、最大限の成長へと導きます。
よくある誤解として、屋内で栽培する大麻作物(あるいは他の作物でも)の蒸散速度が栽培スペースの相対湿度に直接影響するというものがあります。しかし実際はその逆で、生育環境を完全に制御できれば、作物の蒸散速度を調整できるのです。植物の蒸散は成長に直接影響を与え、VPDは蒸散速度を左右します。
理想の世界であれば、部屋の中で何が起きても、栽培空間の温度や湿度を常に正確に安定させることができるでしょう。しかし現実はそうはいきませんが、自動で栽培室の環境を管理できるシステムもたくさん市販されています。では、そもそも蒸散やVPDとは何か、そして収穫の質や成長にどう影響するのかを見ていきましょう。
1. 蒸散(トランスピレーション)とは?
大麻植物内を移動する水分の動きは、葉の表面での水分蒸発速度によって決まります。こうした蒸発現象を蒸散と呼びます。蒸散の主な要因は、RH(相対湿度)、VPD(蒸気圧不足)、およびキャノピー付近の室温です。水分(およびその中に含まれる栄養素)は、まず根を経て、キシレム(導管)を通って植物の上部へ運ばれます。
キシレムは植物の維管束組織で、水を伝導する特殊な細胞(トラケアリー要素)で構成されます。キシレムはさらに水を葉細胞へ運びます。葉に届いた水分は、葉の気孔(ストマタ)を通して徐々に蒸散します。このプロセスは、大麻植物の代謝に不可欠であり、気孔が開くことで光合成の副産物(主にCO2)も排出されます。根から吸収された水分の97%以上は、蒸散またはグッタション(植物が水滴を排出する現象)によって再び失われます。
2. VPDとは?
VPDとは、蒸気圧不足のことで、水蒸気として空気中に存在する水分量を指します。大気は約78%が窒素、21%が酸素、1%がその他の気体(この中に水蒸気が含まれます)で構成されています。これが蒸気圧です。

空気は、一定の温度で持てる水蒸気量が限られており、これを超えると水は液体(例えば雨)になります。空気が持てる最大の水蒸気量をSVP(飽和水蒸気圧)と呼び、温度が高いほどSVPも上昇します。逆に空気が冷えるとSVPは下がり、多くの水蒸気を保持できなくなります。これが朝露の原因です。
3. VPDが大麻植物に与える影響
この記事を読んでいる方は、すでにVPDが室内栽培で重要だとご存知でしょう。条件を管理できるからこそ、ほぼ完璧な環境作りが可能ですが、やり方を間違えれば悪影響も……ではVPDが大麻へどう作用するのか見てみましょう。
気孔の開閉
VPDが上昇すると、植物の気孔は水分損失を防ぐために小さくなり、脱水を防げますが、その分光合成が遅くなることもあります。

CO2吸収
気孔が小さくなるほどCO2の吸収量も減少。逆にVPDが下がり気孔が大きく開けば、多くのCO2を吸収できます。適切な光合成のためどのくらいCO2を与えるかも管理できます。
蒸散
水分は高濃度から低濃度へ拡散する性質があるため、VPDが上がると葉と空気の圧力差で植物の蒸散速度が上がります。
根の栄養吸収
さらにVPDと蒸散が上がることで、根の栄養吸収量も増えます。
植物のストレス
一方で、VPDが高すぎると根から葉まで全体に余計な力が加わり、植物全体がストレスを受けやすくなります。VPDはやり方次第で悪影響も出ます。成長段階ごとに調整することが大切です。「収穫量を増やしている」と思っても実は逆効果の場合も。
4. VPDの計算方法とVPDチャート
栽培空間のVPD計算は簡単です。温度、相対湿度、温度ごとの飽和水蒸気圧(SVP)を把握しましょう。以下のVPDチャートは温度とSVPの関係を示しています。
| 温度 (°C) / SVP | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 温度 | SVP | 温度 | SVP | 温度 | SVP | 温度 | SVP | 温度 | SVP |
| 1 °C | 657 | 7 °C | 1002 | 13 °C | 1497 | 19 °C | 2197 | 25 °C | 3167 |
| 2°C | 706 | 8 °C | 1073 | 14 °C | 1598 | 20 °C | 2338 | 26 °C | 3361 |
| 3°C | 758 | 9 °C | 1148 | 15 °C | 1705 | 21 °C | 2486 | 27 °C | 3565 |
| 4°C | 813 | 10 °C | 1228 | 16 °C | 1818 | 22 °C | 2643 | 28 °C | 3779 |
| 5°C | 872 | 11 °C | 1312 | 17 °C | 1937 | 23 °C | 2809 | 29 °C | 4005 |
| 6 °C | 935 | 12°C | 1402 | 18 °C | 2064 | 24 °C | 2983 | 30 °C | 4242 |
必要な情報が揃ったら、以下の式を使いましょう:
VPD= ((100-RH) ÷ 100) * SVP
例:室温が26°Cの場合、表のSVPは3361。 このSVP値を使い、この例では相対湿度65%とします。あとは計算するだけです。
VPD= ((100-65) ÷ 100) * SVP
VPD= (35/100) * 3361
VPD= 0.35 * 3361
VPD= 1176.35 パスカル
パスカル値が出たら、キロパスカルに変換しましょう。簡単で、1000で割るだけです。
1176.35 パスカル ÷ 1000 ≈ 1.18 キロパスカル
5. 成長ステージ別・理想的なVPD
VPDの計算方法と植物への影響がわかったら、理想的なVPDも知っておきましょう。一般的には0.5-1.4kPa(5-14 hPa)が理想です。大麻は成長段階により条件を調整すれば最高の成長を実現できます。

なお、いきなり全栽培室に適用する前に必ずテストしましょう。このVPDチャートは最大28℃までに調整されています。完全版VPDチャートはネットで探せます。
このVPDチャートでは、薄いピンクが非理想値、濃いピンクは増殖・初期栄養成長に最適、グリーンは後期栄養成長・初期開花に最適、オレンジは中~後期開花に最適です。
クローンに適したVPD
クローンはまだ根が発達していないため、強いストレスに弱いです。高湿度でVPDも低め、0.5 - 0.7 kPaになるべく近付けるのが理想です。
栄養成長期に最適なVPD
栄養成長期になると、植物は大きく頑丈になりますので、湿度を少し下げてVPDを上げます。これにより水分・栄養吸収を促進できますが、上げすぎると気孔が閉じてCO2吸収が減り、成長が悪化します。

これは植物の構造を作る重要な成分の吸収にCO2が不可欠だからで、栄養成長期の理想VPDは0.7 - 1.0kPaです。
開花期の理想VPD
開花期に入ると、植物自体は耐性が増しますが、花は非常にデリケートです。湿度を高くしすぎず、VPDも高すぎないよう1.0-1.4kPaを維持しましょう。
6. VPDを変えるには
VPDを調整する方法は複数あり、以下の変更で可能です:
- 温度
- 湿度
- 照明強度
手軽にできる方法をいくつかご紹介します。
温度
VPDアップ:ヒーターを使ったりエアコンを弱めると空気が暖かくなり、水蒸気を多く保持しVPDが上昇します。
VPDダウン:エアコンで空気を冷やすと水蒸気保持が減り、VPDが下がります。
湿度
VPDアップ:加湿器を使うと空気中の水蒸気量が増えてVPDが下がります。

VPDダウン:除湿機を使うと空気中の水分量が減ってVPDが上昇します。
照明強度
VPDアップ:ライトの高さを下げたり数を増やすと葉の温度が上がりVPDも上昇します。
VPDダウン:ライトを離したり器具を減らすと葉温が下がり、VPDも減少します。
7. 蒸気圧不足(VPD)に関するよくある質問
これですべてのVPD基礎知識が分かりましたが、どんなに深掘りしてもいつも質問は尽きません。そこで、VPDによくある質問・疑問をまとめました。
VPDと相対湿度の違いは?
VPDは、植物の蒸気圧と空気中の蒸気圧の差です。一方、相対湿度は、空気中の水蒸気量とその温度で保持できる最大量の割合です。
家庭栽培でもVPDを気にする必要は?
目指すゴールによります。品質や収量を最大化したいなら重要です。健康維持程度なら環境調整は不要かもしれません。VPD管理は中~上級者向けなので、初心者ならまず温度・湿度調整を優先しましょう。
グロウルームの最適なVPDは?
植物の品種によって少し異なりますが、大麻の一般論としては、栄養成長期は0.5~0.9kPa、ライフサイクル後半には1.2~1.6kPaまで徐々に上げるのが理想です。
温度・相対湿度以外にVPDへ影響するものは?
はい、他にもあります。高度、気圧、肥料の種類や量などもVPDへ影響するので、グロウルーム設計時に考慮しましょう。
グロウルーム内でVPDを計測する方法は?
はい、市販のさまざまな測定器で簡単にVPDを計測可能です。こうした製品を使えばリアルタイムでVPDを把握し環境を最適に調整できます。初心者向けには「Bluelab Guardian Monitor」がおすすめで、一度に温度・湿度・VPD全てを測れます。
VPDの過不足で起こるトラブルは?
VPDが低すぎると環境が過湿になり、栄養不足や生育不良につながります。逆に高すぎると水分欠乏や栄養吸収阻害が発生し、結果的に成長や収量の悪化を招きます。VPD管理を徹底すれば、最良の成長や発達が実現可能です。
VPD計測はどれくらいの頻度で?
最低でも週1回は計測をおすすめします。ただ、VPDだけにこだわらず、まずは温度や湿度など基本管理が大切です。基本ができていればVPDも適正範囲に収まるでしょう。
8. まとめ
蒸気圧不足の管理はプロだけのものだと思われがちですが、適切な機器があれば誰でも実践可能です。これにより最高の環境が維持でき、健康な植物・大収穫につながります。
ビギナーのグロウサイクル向上のヒントがあれば、ぜひコメント欄に書き込んでください!
外部参考資料
- Plant responses to rising vapor pressure deficit. - Grossiord, C. & Buckley, T.N. & Cernusak, L.A. & Novick, K.A. & Poulter, B. & Siegwolf, R.T.W & Sperry, J. & McDowell, N. (2020).
- An ecological study of vapor pressure deficit. - Huffaker, & Barton, Carl. (2021).
- Prediction of Vapor Pressure Deficit in Greenhouse Environment. - Shamshiri, Redmond. (2014).
- Relative humidity or vapor pressure deficit. Ecology. - Anderson, D.B.. (1936).
コメント